まいたけ味

まいたけの味がします。作品レベル以下のアウトプット墓場

教団X

著:中村文則

各方面で絶賛されている様と、この分厚さで「読み応えありそう」と大いに期待してしまったのがやや空ぶった感はある。

十分に良書だとは思うけど新しい感じはなかったなあ。
中村文則は「銃」しか読んでないのでイマイチまだ掴めていない感はあるのかとは思うけど、なんとなく彼のかじった思想や史実や科学と言ったものをひたすら浴びせられている感じで、ストーリー性が希薄だった点は正直期待外れ。
ウンチクと言ってしまうほど低いレベルではないとは思うが、学の高い人はその程度にしか捉えないだろう。特に高原や篠原の思想語りの辺りはちょっと痛めで(設定上もそうなっているが)、伏線があるかもと思って読んだが特になかったので、申し訳ないが読み飛ばしてOKだと思う。

教団自体のカルト性においてもあえてSEXはを外さなかったのかなあ?結局SEXかあ。って思ってしまうんだよね。まあ最後まで読んでいくとそこまで凡庸ではない事はわかるんだけど。
あくまで個人的な印象として1Q84を喚起させてしまう部分が構成上にもあって、そうすると圧倒的にラブストーリーの軸が弱いので感情移入はしづらかった。
もちろん、宗教に対する考察の深さは圧倒的にこちらが上なので、比べるもんでもないとは思いますけどね。

個人的には、宗教的志向における沢渡と松尾の関係性や対立軸のようなものをもっと掘り下げて欲しかった。なぜ同じ師の元から2人のカリスマが全く違うものを作り上げたのか。もしくは共通点がどこにあったのか。
ここもストーリー性が希薄と感じる部分なんだよね。

まあ、読み応えはあるし、スラスラ行けますので読んで損はないです。
あまり伏線はないので鼻につく思想論は飛ばしてもいいですよ。

教団X (集英社文芸単行本)

教団X (集英社文芸単行本)

 

 

FACT FULLNESS

プロセスは違うけど、大きなメッセージである
「世界は着実に急速に良くなっている」
はサピエンス全史と共通点がある。
日本では空白の30年などとも言われるけど十分に豊かさは増し、環境も教育もアップデートされ続けている。
スマホも食洗機もHDDレコーダーもSuicaも無い時代に戻りたい人はいないでしょ。
いるかもしれんけど 
 
娘たちは私たちより遥かに優秀だろう。前提が違いすぎる。
2歳のくせにマーガリンじゃなくてオリーブオイルやグラスフェッドギーをパンに塗ってるんだぜ。刺激の少ないシャンプーや石鹸で、オーガニックも当たり前。ケガしても湿潤療法でキレイになおり、副流煙を吸う事なんて年に何回あるのだろうか。
いつでもどこでもFire TVが見れるのが当たりまえ。移動中も映画、喫茶店でドリルしたり絵本を読んだり。図書館といつも一緒。
 
新しいものを否定したり子供にはまだ早いなんて言っても意味はない。ただ取り残されていくだけだ。どんどん慣れさせて人類のUpdateをリードさせるんだ。
 
君たちの未来は明るい。できるだけ、舞台は整えておく。 

言の葉の庭

監督:新海誠

こちらはSF要素ナシ。
短いのでアッサリ感と消化不良感は否めないが、テーマである雨と絵のキレイさは相性が良い。
ヒロインが27歳なのでアニメ声感は多少薄れ、そこは落ち着いてみられた。

言の葉、と言う題材は特別効いてない印象。正直なくても良かったような。

まあ新海3作品見て今のところの印象は、は女子の視点が弱いと言うか男子独りよがり感が強くてオジサンが見るにはチト若いんだよね。。。
描かれる女性に今ひとつ魅力がない。若い男子が憧れてる、と言う設定ありきでこれは憧れるなあみたいな描写が無いんじゃ。

しかしエンディングテーマにはヤラれました。大江千里のrainをハタ坊がカバーするとは。ドストライク。

雲のむこう、約束の場所

監督:新海誠
15年も前の作品なのか。

SF要素が強く、監督がブレイクしたヒット作の原点と言えそうな作品。
長編デビュー作らしいが声優は豪華。案外金かかってる?

絵はきれいだし悪い所はそんなに無いが特に面白い点も無いと言うか、まあ90分じゃSF設定の細い話は出来ないだろうから限界なのかなあ?と思う。

と言うあたりで、青春話が軸である所は良いけどもSF要素がそれを盛り上げてるかと言うと、あまりそんな気もしない。

率直に言えば新海作品全体的に、ヒロインの声が弱々しくて典型的アニメ声なのがイマイチ好みでなく、感情移入しづらいのはマイナスだった。

サピエンス全史

著:ユヴァル・ノア・ハラリ

入院でまとまった時間が出来たので読み切りました。
さすがの世界的ベストセラーすな。

世界史をある程度把握してないと途中厳しいかもしれんけど、ウィキペディアと行ったり来たりでより面白さ膨らみます(時間はかかるけど。。。)。

私はマゼランが出てきた所でウィキに飛んでそっちが面白くて2時間くらい脱線したりしました。

7万年と言うスパンで見るからこそ、各サブジェクトの特異性について、なんとなく思考していた所から一歩深い考察が出てきます。

例えば、貨幣の登場により「虚構を信用する事による仕組みが成立した」と言う点は想像のつく範囲だか、貨幣の「許容性」と言う点はマクロで「帝国」や「宗教」と比較しないと見えてこない。
また、この貨幣の許容性は資本主義にも繋がって行くと言う前後の歴史を見ないと見えてこない。

このあたりはさすがで、最終的には、「我々は何なのか」と言う"科学的"哲学書としても読める。

続編?ホモデウスも読むか。。。

秒速5センチメートル

監督:新海誠
あっと言う間に日本を代表するアニメーション監督になった新海さん。
WOWOWの特集でまとめて見たので連投します。

本作はSFでは無いですが、1番好きかもしれません。最後マサヨシの歌で引っ張ると言うのはなかなか勇気のいる事だと思うけど、印象に残ってるので勝ちかと思う。

3話構成で前2話は文句なし。最終話は賛否分かれるとは思う。個人的には、話の展開としては良くともあまりに唐突でトーンも変わって「えっ?なんか見逃してるオレ?」みたいになった。
なんでそうなった?の所がちと弱すぎるかなあ。
でないと「青春」と「大人の現実」の落差だけを描かれたような気がしてしまう。
あの「青春」は妄想だったってこと?みたいな。

とは言え印象に残る作品でした。

秒速5センチメートル [Blu-ray]

秒速5センチメートル [Blu-ray]

  • 発売日: 2008/04/18
  • メディア: Blu-ray

八日目の蝉

監督:成島出

原作:角田光代


久しぶりの大ヒット。
原作を読む前に見たのは良かったか悪かったか分からないけど、読まなくても十分に良い。しばらく最も泣ける映画として君臨するだろう。
島での安定した暮らしからの流れ。別れ際のセリフ。やばい。


とにもかくにも永作博美が素晴らしすぎる。彼女はもうこれを超えられないんじゃないか。井上真央も良い。みんな良い。

 

小池栄子は評判は良いようだけど個人的には演技ぶってる部分がちょっと気になってしまう。実力というよりテレビ露出がややマイナスになってるとは思うので、まあかわいそうだけど。 

 

あとは、森口瑤子演じる母親がやや悪めに描かれているので、そこがこの話が永作寄りに引っ張られてしまう部分であり、だからこそ泣けるという事もあるのだろうけど、現実的に森口寄りの視点で見ると泣けない部分もある。そこが賛否分かれるところでしょうね。

 

原作もこの後で読んだが、最後のすれ違いシーンは映画の方がうれしいです。

八日目の蝉

八日目の蝉

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video