まいたけ味

まいたけの味がします。作品レベル以下のアウトプット墓場

たかが世界の終わり

監督:グザヴィエ・ドラン

2016カンヌ グランプリ(次点)

これにグランプリを出すのはさすがカンヌ。
グザヴィエ・ドランは初見ですが、この年齢(当時27歳)でこの作品撮るんかいという恐ろしく展開も話の筋もない映画。
深井龍之介が本を読むのに知的体力がいる、という事を言っていて、たとえば十分に知的体力のある人=マラソン完走できる、としたならば、この本は32.5kmくらいとか、この本は5kmくらい走れれば読める、みたいな話。
映画にもまあそういうのがあるかもなあ、と思わせる作品で言うならばこれは30kmくらいの体力はいるかなあと思う。

と言っても、自分でページを捲らなければならない本と違い、映画は理解できなくても勝手に進む。なので私の考える映画における体力というのは、退屈に耐えられる力だと思う。このなんもないシーンに10分かけるんかい、というのは監督が観客にそれだけの時間を体感させたいという意図があるわけで、それを体感しないと監督が見据える全体像が見えてこないわけです。というわけでコレを普通に楽しめる人はまあまあ体力がある人だと思う。

と、前振りがずいぶん長くなったが、それだけ中身に対して語ることのない映画、と率直に言いましょう。
冒頭にややドラマティックな設定がなされ、主人公と観客はそれを裏設定としてこの帰省の目的が共有される。一応はそれがこの映画の一本筋となり、それぞれの会話に意味や含蓄を持たせることに成功している。逆に言えばほぼそれだけでこの映画は引っ張られており、それ以外何も起きない(結局はそれさえも起きないのだけど)。

ギャスパー・ウリエル他、俳優陣は魅力が十分(特にヴァンサン・カッセルのイヤな奴ぶりは若干本当にイラつく)で、会話はずっと続くので、それほど何かのシーンが長く感じるということはない。
と言ってもこれだけ何の展開もなく、皆が待ち受けているカミングアウトによるドラマティックまたはサプライスは結局来ない、というある意味サプライズ。

幸いにも評論家ではない我々は評価をする必要はない。
好きか嫌いかで言えば、私はこういう映画が好きです。すいません。