まいたけ味

まいたけの味がします。作品レベル以下のアウトプット墓場

教団X

著:中村文則

各方面で絶賛されている様と、この分厚さで「読み応えありそう」と大いに期待してしまったのがやや空ぶった感はある。

十分に良書だとは思うけど新しい感じはなかったなあ。
中村文則は「銃」しか読んでないのでイマイチまだ掴めていない感はあるのかとは思うけど、なんとなく彼のかじった思想や史実や科学と言ったものをひたすら浴びせられている感じで、ストーリー性が希薄だった点は正直期待外れ。
ウンチクと言ってしまうほど低いレベルではないとは思うが、学の高い人はその程度にしか捉えないだろう。特に高原や篠原の思想語りの辺りはちょっと痛めで(設定上もそうなっているが)、伏線があるかもと思って読んだが特になかったので、申し訳ないが読み飛ばしてOKだと思う。

教団自体のカルト性においてもあえてSEXはを外さなかったのかなあ?結局SEXかあ。って思ってしまうんだよね。まあ最後まで読んでいくとそこまで凡庸ではない事はわかるんだけど。
あくまで個人的な印象として1Q84を喚起させてしまう部分が構成上にもあって、そうすると圧倒的にラブストーリーの軸が弱いので感情移入はしづらかった。
もちろん、宗教に対する考察の深さは圧倒的にこちらが上なので、比べるもんでもないとは思いますけどね。

個人的には、宗教的志向における沢渡と松尾の関係性や対立軸のようなものをもっと掘り下げて欲しかった。なぜ同じ師の元から2人のカリスマが全く違うものを作り上げたのか。もしくは共通点がどこにあったのか。
ここもストーリー性が希薄と感じる部分なんだよね。

まあ、読み応えはあるし、スラスラ行けますので読んで損はないです。
あまり伏線はないので鼻につく思想論は飛ばしてもいいですよ。

教団X (集英社文芸単行本)

教団X (集英社文芸単行本)