まいたけ味

まいたけの味がします。作品レベル以下のアウトプット墓場

アイドリングストップ

その時バスの中には20名ほどの人達が乗っていた
雨の為か道は比較的混んでいて ゆっくりと流れは進んでいく
信号待ちで停車すると 運転手はエンジンを切った


衆議院選挙の宣伝カーが 異常な大音量で対向車線をすれ違う
20名ほどの人達は一斉に 怪訝そうに宣伝カーを見送る
宣伝カーが離れて行き 道路のど真ん中に慣れない静寂が訪れると
向こうが異常なのではなく こちらが異常なのかもしれないと思う


何台もの車に囲まれた道路のど真ん中では
エンジンを切ったバスはあまりに静かすぎる
エコロジカルな正義感と 感じる必要のない罪悪感の混在
例えばそれは 道路建設の為の用地買収に
最後まで抵抗する共同体のような


「山田さん、アンタは先祖代々ずっとここに住んできたんだ」
「裁判所が何を言おうと、アンタがここを出て行く理由なんて何も無い」
代替の欠陥住宅に移った住民達の怒りを 彼は一人で背負っていた


信号が青に変わっても 彼はエンジンを切ったままだ